本書ではいわゆる「自己啓発イデオロギー」に対して「自己啓発で能力は向上しない」というなかなか思い切った断定を下し、反論を展開しています。
人は常に努力によって能力を向上させ続けなかればならず、それによってのみ満足のいく仕事や生活を獲得し得るという、自己啓発イデオロギーが人を決定的に傷つけ、追い込む可能性のある危険物であることは、僕も以前から感じていました。
各自が自己の興味・目的・信条に基いて、より良い存在になるべく努力するというのは、もちろんとても良いことです。ただし、これがイデオロギー化すると、がんばった結果達成できなかった人、がんばることが出来なかった人が必要以上のストレスにさらされる社会となってしまいます。これが怖い。
「上を目指すこと」は肯定・賞賛されて良いが、同じ強度で「目指さないこと」が否定されるのはいけない。